体幹トレーニングの中でも、横方向の安定性を重視したトレーニングが「ハイサイドプランク」です。通常のサイドプランクよりも支持面が小さく、不安定な姿勢を支えるためにより強い筋活動が求められます。特に腹斜筋や中臀筋、脊柱起立筋などの深層筋に高い負荷がかかり、姿勢保持力やバランス能力の向上に効果的です。
この記事では、ハイサイドプランクで鍛えられる筋肉や正しいフォーム、効果を高めるコツまで、詳しく解説します。効率的に体幹を鍛えたい方は、ぜひ参考にしてください。
ハイサイドプランクで鍛えられる部位
ハイサイドプランクは、身体を横向きに支える姿勢から、多くの体幹筋群にバランスよく刺激を与えるトレーニングです。特に鍛えられるのは、腹斜筋や腹横筋といった腹部の深層筋、さらに骨盤や脊柱を安定させる中臀筋や脊柱起立筋です。これらの筋肉は、単なる筋力だけでなく、姿勢保持力や動作の安定性に直結する重要な部位です。
ここでは、それぞれの筋肉がどのように関与しているかを詳しく解説していきます。
腹斜筋

ハイサイドプランクは、腹斜筋を集中的に鍛える体幹トレーニングのひとつです。腹斜筋は、体幹のねじれや傾きを制御する筋肉であり、特に外腹斜筋と内腹斜筋の連動によって姿勢の安定性が保たれます。日常動作やスポーツにおいて体をひねったりバランスを取ったりする際に、非常に重要な役割を果たします。
ハイサイドプランクで腹斜筋が鍛えられる理由は、横方向からの負荷に抗いながら体を一直線に保つ姿勢にあります。片手と片足で支える不安定な姿勢の中で、腹斜筋が体幹の側屈を防ぐブレーキとして機能し続けるため、他の体幹種目と比べて負荷が集中しやすいのです。
ハイサイドプランクを30秒キープするだけでも、腹部の横側に強い張りを感じる人が多く、これは腹斜筋が持続的に収縮している証拠です。加えて、脚や腕を上げるバリエーションを取り入れると、さらに収縮強度が高まります。
このように、腹斜筋はハイサイドプランクで最も活性化する筋肉のひとつであり、くびれをつくるだけでなく、姿勢制御や運動パフォーマンスの向上にも寄与します。
中臀筋

ハイサイドプランクでは、体幹だけでなく中臀筋にも負荷がかかります。中臀筋は股関節外側に位置し、片足で立ったりバランスを取ったりする際に骨盤の安定を保つ重要な筋肉です。特に、骨盤が左右に傾かないように制御する役割を担います。
ハイサイドプランクで中殿筋に負荷がかかる理由は、ハイサイドプランクの姿勢が片側支持であることです。上側の脚を床から離したり、長時間保持する姿勢では、骨盤が落ちてしまわないように中臀筋が常に緊張状態で働き続ける必要があります。これにより、中殿筋に負荷がかかり、動かない状態でも効かせることができます。
実際に行ってみると、臀部の外側、特に腸骨稜周辺がじわじわと熱くなってくる感覚を感じられます。これは中臀筋がアイソメトリック(静的収縮)で負荷に耐えている状態を示しています。
結果として、中臀筋が強化されると骨盤の位置が安定し、歩行時やランニング、片足立ちなどの動作が安定します。股関節の可動域が広がり、ケガの予防にもつながるため、体幹と下半身をつなぐ重要な架け橋として意識して鍛える価値があります。
脊柱起立筋

脊柱起立筋は、ハイサイドプランク中に背骨をまっすぐに保ち、全身のバランスをとるうえで欠かせない筋肉です。背骨沿いに縦走するこの筋群は、静的な姿勢を維持する際に持続的に収縮し、特に背部から腰部にかけての安定性に大きく貢献します。
ハイサイドプランクでは、体が沈み込んでしまわないように脊柱をまっすぐにキープする必要があり、このとき脊柱起立筋が姿勢保持の主役として働きます。また、手と足で支えながら胴体を浮かせるため、背面からの支持力も重要です。
脊柱起立筋が強化されることで、猫背や反り腰の予防につながるほか、デスクワークなどで凝り固まりやすい背面の筋バランスを整えることができます。
腹横筋

腹横筋は、腹部の最も内側に位置するインナーマッスルであり、体幹の安定性に最も重要な役割を果たします。ハイサイドプランクでは、見た目には動いていないように見えても、この腹横筋が内側から腹圧を高め、背骨と骨盤の位置を保つために絶えず働いています。
その理由は、姿勢を静止させながらも体幹が崩れないように内側から支える必要があるためです。腹横筋が弱いと、体がぶれてしまったり、腰が落ちたりしてしまい、正しいフォームを維持できません。
例えば、ハイサイドプランクで腰が落ちやすい人は、腹横筋の働きが不十分なことが多く、フォームを保つために無意識に他の筋肉に頼ってしまいます。これは効率的なトレーニング効果を損ねるだけでなく、腰や肩への負担にもつながります。
腹横筋がしっかり働いていれば、腹圧が高まり、体幹の軸がブレずに保たれるため、運動時のパフォーマンス向上や腰痛予防にも効果があります。意識的に深い呼吸を取り入れることで、腹横筋の活性化をより実感できます。
ハイサイドプランクの正しいやり方
ハイサイドプランクを正しく行うことで、体幹の深層筋を効率よく鍛えることができます。フォームが崩れると負荷が逃げたり、腰や肩に負担がかかったりするため、ポイントを押さえて丁寧に実施することが大切です。
横向きになり、手を肩の真下にセットします。足はまっすぐに伸ばし、両脚を重ねた状態で床につけます。
下側の手と足の側面で体を支えたら、骨盤を持ち上げて体全体を一直線に保ちます。このとき、肩・腰・足が一直線上にあることを意識し、腰が落ちたり反ったりしないように注意しましょう。視線は前方またはやや下を向き、首に力が入らないようリラックスさせます。
キープ時間の目安は20〜30秒から始め、徐々に延ばしていくのが理想です。左右同様の動作を3セットずつ繰り返します。
初心者の場合は、脚を前後にずらしてバランスを取りやすくしたり、膝を床につける「膝つきハイサイドプランク」から始めると無理なく取り組めます。また、上級者であれば、上側の腕や脚を持ち上げることで体幹への刺激をさらに高めることも可能です。
正しいフォームを意識して行えば、腹斜筋や中臀筋、腹横筋など、複数のインナーマッスルを効果的に鍛えることができます。最初は短時間でも構わないので、崩れないフォームを維持することを最優先に取り組みましょう。

ハイサイドプランクのコツ

ハイサイドプランクを効果的に行うには、単にポーズを真似るだけでは不十分です。見た目には静止しているようでも、体幹の深層筋を正しく刺激するためには、細かなフォームの意識や呼吸の使い方が極めて重要です。わずかな姿勢のズレや骨盤の傾きが筋肉への負荷を逃し、トレーニング効果を大きく下げてしまう原因になります。
ここでは、ハイサイドプランクの効果を最大限に引き出すためのフォームのコツや安定させるポイントについて、具体的に解説します。初心者から中上級者まで、ぜひフォーム確認の参考にしてください。
頭から足先まで一直線を意識する
ハイサイドプランクでは、頭から足先までを一直線に保つことが最も基本かつ重要なコツです。体幹が正しく働くためには、全身のラインを安定させる必要があり、特に腹斜筋や中臀筋の収縮が正しく起こるための土台となります。
多くの人はこの一直線の姿勢を作るつもりでも、実際には骨盤が落ちたり、頭が前に出たりといったフォームの乱れが起こりがちです。これにより筋肉への刺激が弱まるだけでなく、首や腰への負担が増える可能性もあります。
スマホのカメラで自分のフォームを横から撮影して確認すると、肩・腰・足が一直線上に並んでいないことに気づくケースが多いです。この姿勢のズレは、筋力不足や意識の甘さが原因であることがほとんどです。
フォームを維持するためには、まず頭を引き上げ、首の後ろを伸ばすように意識しながら、肩甲骨を軽く引き寄せること。そして、お腹に力を入れて骨盤を軽く前傾させることで、体幹が安定します。足はかかとを遠くに押し出すような感覚を持ち、全身を一本の柱のように保ちましょう。
骨盤の高さを保って下がらないように注意する
骨盤の高さを一定に保つことは、ハイサイドプランクで体幹にしっかりと負荷をかけるうえで欠かせないポイントです。骨盤が落ちると、姿勢が崩れて負荷が分散され、狙った筋肉に刺激が届かなくなってしまいます。
骨盤が落ちる原因は、特に腹斜筋や中臀筋の筋力が不足している場合によく見られます。骨盤が下がると、反対側の腰椎が反るようになり、腰痛の原因にもなりかねません。見た目のフォームが整っていても、骨盤が微妙に傾いていると効果が激減します。
鏡の前でハイサイドプランクを行い、自分の骨盤が地面と平行かどうかを確認することで、意識的に高さを保つ習慣がつきます。また、スマホの録画機能でフォームをチェックするのもおすすめです。
骨盤の安定には、脇腹や臀部の筋肉の連動が必要です。お腹をしっかり締めて、骨盤が真横を向くように意識するとともに、お尻の横側(中臀筋)に力が入っているかを確認しましょう。高さを意識するだけで、体幹への負荷が格段に高まり、トレーニング効果が飛躍的に向上します。
反動を使わずに静止状態を保つ
ハイサイドプランクでは、反動を使わずに静止状態をキープすることも大切です。筋力ではなく反動や勢いに頼ってしまうと、鍛えるべき体幹筋群への刺激が弱まり、トレーニングの効果が大きく下がります。
動作中にぐらついたり、リズムをつけて揺れてしまう人は、体幹の筋力不足か、フォームが安定していないことが多いです。静止することで得られるアイソメトリック収縮(等尺性収縮)は、深層筋を効率よく刺激するための重要な要素です。
脚を上げたり手を動かしたときに体が揺れる場合は、負荷に耐えるための体幹筋が十分に働いていないサインです。その場合は、難易度を下げて静止時間を優先する方が効果的です。
反動を使わないためには、力を一点に集中させず、全身を均等に使う意識が必要です。特に肩・脇腹・腰・足の4点でバランスよく力を分散させることで、フォームが安定し、体幹の深部にしっかりと刺激が入ります。時間にこだわるよりも、まずは動かないことに集中するのが成功のコツです。
呼吸を止めずに腹圧をコントロールする
ハイサイドプランクでは、呼吸を止めずに腹圧を維持することが重要です。無意識に息を止めてしまうと、腹横筋などインナーマッスルの働きが妨げられ、体幹の安定性が低下してしまいます。
呼吸が止まる主な理由は、「姿勢をキープしよう」とする集中が過度になり、全身に力が入りすぎるためです。この状態では表層の筋肉ばかりが働き、体幹深部に効かせることが難しくなります。
「吸って4秒、吐いて4秒」といったリズムを意識して呼吸を続けることで、体幹内部の圧力が安定し、フォームの保持がぐっと楽になります。呼吸のたびに腹部が緩まないように、お腹を軽くへこませた状態で呼吸するのがポイントです。
呼吸を意識的に整えることで、腹横筋が自然と活性化し、体幹の内側からの支えが強化されます。息を止めず、一定のテンポで呼吸を続ける習慣をつけることで、長時間のキープや動的なバリエーションにも対応できるようになります。
ハイサイドプランクに関するQ&A
- ハイサイドプランクとサイドプランクの違いは何ですか?
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ハイサイドプランクは肘ではなく手で支える姿勢で行うため、より高いバランス能力と筋力が求められます。肩や手首への負荷が大きくなるため、体幹に加え上肢の安定性も強化されるのが特徴です。
- ハイサイドプランクがきつくてできない場合の初心者向けの方法はありますか?
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初心者には「膝つきハイサイドプランク」がおすすめです。膝を床につけて支えることで負荷が軽減され、正しいフォームの習得に集中できます。まずは短時間から始めて徐々に強度を高めましょう。
- ハイサイドプランクはどのくらいの時間キープすれば効果がありますか?
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初心者は20〜30秒、慣れてきたら45〜60秒を目標にすると良いでしょう。正しいフォームを維持できる範囲で実施することが最優先です。無理に長時間キープするよりも、質を重視しましょう。
- ハイサイドプランクで鍛えられる筋肉はどこですか?
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主に腹斜筋、腹横筋、中臀筋、脊柱起立筋など体幹の深層筋が鍛えられます。これらの筋肉は姿勢の安定や腰痛予防、スポーツパフォーマンス向上にも大きく貢献します。
ハイサイドプランクで体幹を鍛えよう

ハイサイドプランクは、腹斜筋や中臀筋、腹横筋など体幹を支える重要な筋肉を効果的に鍛えられるトレーニングです。正しいフォームを意識し、姿勢の一直線をキープすることで深層筋にしっかり刺激が入り、姿勢改善やパフォーマンス向上にもつながります。反動を使わず静止し、呼吸を止めずに行うことで安全かつ高効率なトレーニングが可能です。
まずは無理のない範囲から始め、少しずつキープ時間や難易度を高めていきましょう。継続することで、芯の通った安定した身体を手に入れることができます。