乳酸は疲労物質ではない?筋トレのエネルギーとして活用される理由とは




筋トレを行っている方なら誰しもが一度は耳にしたことがある乳酸。

皆さんは乳酸に対してどのような印象をお持ちでしょうか?

以前は疲労物質として定着していた乳酸ですが、現在は乳酸がエネルギーとして活用されることが分かってきました。

そこで今回は、「乳酸がどうして疲労物質ではないのか?」「どのようにしてエネルギーとして活用されるのか?」について解説していきます。

乳酸が発生するメカニズムとは?

そもそも乳酸がどのようにして生成されていくのか疑問に思っている方もいるでしょう。

乳酸は筋トレなどの無酸素系のトレーニングで必要なエネルギーを生み出す際に生成されます。

このように筋トレなどの瞬発的にエネルギーを必要とする運動を行う場合、筋肉内に蓄えられている糖質(グリコーゲン)を代謝することでエネルギーとなるATP(アデノシン三リン酸)を作り出し、その副産物として乳酸を生成。

特に強度の高い運動の場合、糖質がエネルギーとして活用される割合が高まり、結果的に乳酸の生成量も向上します。

また、乳酸が増えることで体内に蓄積される乳酸の量も向上することで、成長ホルモンの分泌も促進されます。

 

成長ホルモンに関しては以前までは筋肥大を促すホルモンとして注目されていましたが、現在では成長ホルモン自体には筋肥大を促す働きがないことがわかっています。

では、なぜ筋トレにおいて成長ホルモンの分泌促進が重要なのか?

それは成長ホルモンの分泌が増えることによってIGF-1(インスリン様成長因子)の分泌が促されるためです。

IGF-1は主に肝臓から分泌され、m-TOR(エムトール)の活性化筋サテライト細胞の活性化によって筋肥大を促します。

つまり、糖質をエネルギーとすることで生成された乳酸は、結果的に筋肥大の促進にも影響を与えているということです。



乳酸は遅筋線維のエネルギーになる?

乳酸と聞くと多くの方が「疲労物質」として認識していると思いますが、最近では乳酸は疲労物質ではなくエネルギーとして活用される中間代謝産物であるとの認識が強まっています。

以前までの認識は、強度の高い筋トレを行うことで乳酸の血中濃度が上昇することで疲労と乳酸が結び付けられてきました。

しかし最近では、筋トレなどの瞬発的な運動によって乳酸が蓄積されると心筋遅筋線維でエネルギーとして活用し、これによって血中乳酸濃度が低下することがわかっています。

 

乳酸が遅筋線維に取り込まれると、酸化系の代謝経路によってエネルギーとして消費されます。

酸化系代謝経路に取り込まれる際には乳酸を輸送するトランスポーターが働き、この働きによって遅筋線維に取り込まれた乳酸はピルビン酸になり、アセチルCoAに変換された後にTCA回路(クエン酸回路)に送られます。

TCA回路で複雑な過程を経たあと、TCA回路で発生した水素イオンが電子伝達系に入り、ATPを合成してエネルギーとして活用されます。

 

また、乳酸は肝グリコーゲンとなってエネルギーとしても活用されます。

糖質がエネルギーになる際に生成された乳酸は、肝臓に送られてピルビン酸になり、グルコースに変換された後に肝グリコーゲンになります。

他にも、心筋で乳酸がエネルギーとして活用されるなど、乳酸は多様なエネルギーに変換される代謝物であると言えます。



筋肉が疲労する理由とは?

乳酸は筋肉の疲労物質ではなく、様々なエネルギーとして活用される代謝物です。

しかし、「乳酸が疲労の原因ではないとしたら何が原因となっているのか?」と疑問に思う方もいるでしょう。

筋肉の疲労には様々な要素が関連していますが、そのひとつがリン酸の蓄積です。

 

筋肉を収縮させるときのエネルギーは、ATP(アデノシン三リン酸)ADP(アデノシン二リン酸)リン酸に分解することで起きますが、このリン酸が疲労の原因になります。

ただ、なぜリン酸が疲労の原因になるのか?

それはリン酸がカルシウムと結合しやすい性質があり、カルシウムの筋収縮の働きを阻害するためです。

カルシウムは筋小胞体に蓄えられており、筋小胞体から出ることで筋肉が収縮し、戻ることで弛緩しますが、カルシウムがリン酸と結合してしまうと筋収縮の働きを悪化させてしまい疲労を感じます。

他にも、筋グリコーゲンの不足無酸素性代謝による水素イオンの蓄積血液循環の悪化なども疲労の原因となっています。



筋肉の疲労を改善する方法とは?

疲労した筋肉を素早く回復させて次のトレーニングを行いたいと考えている方は少なくないのではないでしょうか。

筋肉は様々な要因で疲労しますが、回復を早めるために効果的なのは血行の促進栄養の補給睡眠の質の向上です。

血行の改善で筋疲労を抑制

運動やトレーニングを行った後にストレッチを取り入れる方が多いと思いますが、その目的は血行促進による筋疲労の抑制です。

筋トレを行うことで筋線維に微細な損傷が生まれ、これによって筋線維が炎症を起こした状態になります。

この状態のまま放置してしまうと炎症が進んでしまうため、ここでケアをする必要があります。

 

そこで重要となるのが、血流の改善です。

ストレッチなどで血流が改善されると炎症反応を抑え、疲労の緩和を促すことができます。

また、血流の改善によって疲労物質を除去する働きもあり、より早く筋肉の回復を行うことが可能です。

栄養の補給で筋疲労を抑制

続いて重要となるのが、筋トレ後の栄養補給です。

筋トレ後の定番と言えばプロテインですが、糖質の摂取も欠かせません。

筋トレ後はエネルギーが枯渇した状態で、エネルギー源である糖質を素早く補う必要があります。

エネルギーを素早く補えれば筋分解を防ぎ筋疲労の軽減にもつなげることができます。

 

また、筋疲労の軽減には抗酸化物質であるビタミンC・Eやポリフェノールの摂取も効果的。

筋トレなどのトレーニングを行うと活性酸素が大量に発生し、除去が追い付かなくなると疲労感につながります。

それを防ぐために抗酸化物質を摂取することで活性酸素を除去し、疲労の蓄積を抑えることができます。

睡眠の質の向上で筋疲労を回復

意外と見落としてしまいがちなのが、睡眠。

睡眠は脳を休ませる以外にも、筋肉の回復においてとても重要です。

寝ている間に、損傷を受けた筋肉を回復させるために成長ホルモンの分泌が促進されたり、不足した筋肉内のグリコーゲンを補充をしてエネルギー回復を行ったりします。

特に大切なのは、深いノンレム睡眠を促すこと。

深い良質な睡眠は、筋肉の疲労回復に欠かせません。

他にも、睡眠がしっかり取れていないと、筋肉が疲労するまでの時間が短くなったり、筋力維持をする力が低下したりします。

つまり、睡眠が取れていなければ筋トレで筋肉量を増やすために大切な負荷量を大きくすることができないということ。

なので、睡眠の質を向上させることは筋肉の回復だけでなく、筋肥大においても重要であると言えます。



まとめ

今回は乳酸がエネルギーとして活用される理由について解説しました。

以前までは疲労物質だという認識が一般的でしたが、現在ではエネルギーとして重要な代謝物という認識が一般的。

乳酸にあるように今まで常識であったことが常識でなくなる場合もあるので、日々新しい知識をつけていくのも筋トレにおいては重要です。