お香が体に悪いといわれる理由|科学的根拠についても解説

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お香

お香は多くの方がリラックス目的で利用している一方で、煙や香料に対して漠然と不安を抱えている方も多いのではないでしょうか。

お香が体に悪いといわれる理由や実際にはどのような健康リスクがあるのか、科学的な視点からお香の影響について読み解き、安全に楽しむ方法や代替手段なども具体的に解説していきます。

目次

お香が体に悪いといわれる理由

お香

お香が体に悪いといわれる理由は、煙や香料に対して不安を感じる人が多いためです。

また、お香の種類や成分によっては、有害物質やアレルギーの原因となる成分が含まれている場合もあるため、「体に悪い」というイメージが広がっています。ここではお香が体に悪いといわれる理由について詳しく解説していきます。

お香の煙には微粒子が含まれる

お香を焚くとき、一番に気になるのは煙です。この煙には、燃焼によって生じたPM2.5(微小粒子状物質)やその他の微粒子が含まれる場合があります。PM2.5とは、粒径が2.5マイクロメートル以下の非常に小さな粒子の総称で、粒子が小さいために肺の奥深くまで入り込みやすく、健康リスクを高めるとされています。

例えば、敏感な人や喘息を持つ人など、煙を吸い込むことで症状が悪化しやすくなる可能性があります。これが「お香の煙は体に悪い」といわれる大きな理由の一つです。

煙の成分は、燃やしている原料によっても異なります。例えば、竹芯付きの線香の場合、竹の燃焼成分が混ざり、微粒子の種類や濃度に影響を与えることがあります。また、安価な原料や合成物質を使ったお香では、燃焼時の煙の質がさらに変化する可能性があります。

部屋の窓を閉め切って焚く場合、室内の空気が滞留して煙がこもってしまうことで微粒子を長時間吸い続けるリスクが高まるので注意が必要です。

さらに、お香を焚く頻度や時間帯が長ければ長いほど、室内環境は悪化しやすくなります。人によっては、一日中焚きっぱなしにして香りを楽しむ人もいますが、それだけ煙を吸い込む量も増えるため、リスクが高まることは否めません。適切に換気を行い、焚く時間や場所を工夫すればある程度リスクを抑えられますが、それでも「煙」という要素がある以上、気になる人にとっては不安の残る部分となりがちです。

お香の香料には化学物質が含まれることもある

お香の香りは、天然由来の精油やハーブなどを使用している場合もありますが、中には合成香料を使っている製品も多く存在します。合成香料自体が必ずしも悪いわけではありませんが、それらが燃焼されるときに悪影響を及ぼさないとは言い切れません。

体質によっては、特定の香料や添加物に対してアレルギー反応を引き起こす人もいます。例えば、鼻炎や花粉症を持っている人が、強い香りのする合成香料入りのお香を焚くと、くしゃみや鼻水が止まらなくなるなどの不快症状を感じる場合もあります。また、肌が敏感な方や小さな子ども、高齢者がいる家庭では、少しの化学物質でも大きな負担になることが考えられます。これが、お香に対するネガティブなイメージをさらに強める要因です。

また、天然由来のお香であっても、植物性の成分によるアレルギーがある場合は気をつけなければなりません。「天然=安全」とは限らないことを理解しておくと、より慎重にお香を選べるはずです。合成香料と比較すると、天然由来のものは刺激が少ない場合が多いという考えもあります。しかし、刺激に関しては個人差があり、結局は自分の体質や使用環境に合わせて、お香の種類を上手に選ぶことが重要です。

お香の健康リスクに関する科学的知見

お香

お香に関する科学的な研究では、主に煙の成分分析や香料、それらが人体に与える影響について調査されています。ここではそれぞれの研究における人体への影響について解説していきます。

呼吸器への影響

お香の煙は呼吸器に悪影響を及ぼす可能性が指摘されています。煙には微小粒子状物質(PM2.5)や一酸化炭素、揮発性有機化合物(VOC)などが含まれ、副流煙(受動喫煙)並み、時にそれ以上の有害性があるとされます。

例えば、お香の粒子状物質の発生量はタバコより多く、1グラム燃焼あたり約45mgの粒子を放出し、タバコの約10mg/グラムの4.5倍に達するとの報告もあります。これらの微粒子や有毒ガスを日常的に吸入することで、以下のような呼吸器系へのリスクが懸念されています。

  • 肺機能低下
  • 喘息やアレルギー発症リスク
  • 慢性呼吸器疾患

参考:Burning incense can pose health risks for those with allergies and asthma

発がん性の懸念

お香の煙には発がん性が疑われる物質が含まれます。国際がん研究機関(IARC)は大気中のPM2.5をグループ1(ヒトに発がん性あり)に分類しており、お香の煙も例外ではありません。

実際に東京都健康安全研究センターの調査によると、線香やお香、蚊取り線香の煙には発がん性物質であるベンゼンが含まれ、​6畳の部屋で1時間これらを燃焼させた場合、室内のベンゼン濃度は5.4から31.3μg/m³と推定され、これは大気環境基準の3μg/m³を上回る数値になると報告されています。

参考:線香、お香及び蚊取り線香の煙中ベンゼン濃度

アレルギーや皮膚への影響

お香の香り成分や煙はアレルギー反応や刺激症状を引き起こすことがあります。煙中の粒子や化学物質は、目・鼻・喉などの粘膜や皮膚を刺激し、敏感な人では免疫系が反応して炎症を生じることがあります。

お香には多くの場合、香り付けのための天然精油や合成香料が含まれており、中にはアレルギーを誘発しやすい物質もあります。例えば、中国製の一部のお香からはニトロムスク系合成香料(ムスクアンブレット、ムスクケトン、ムスクキシレン)が検出されており、これらはアレルギー性接触皮膚炎や光感作性皮膚炎(日光に当たることで生じる皮膚炎)の原因になり得ることが報告されています。

お香の煙に含まれるホルムアルデヒドやアクロレインなどのアルデヒド類は強い粘膜刺激作用があり、鼻粘膜や気道を刺激して炎症反応や気道収縮(気管支攣縮)を誘発します​これによりアレルギー性鼻炎や喘息様症状(咳、喘鳴など)が引き起こされることがあります。

また、お香の微粒子や揮発性有機化合物(VOC)は目や喉の粘膜も刺激し、眼や咽喉の炎症を生じさせることも報告されています​。したがって、お香の煙そのものが刺激性の物質による非アレルギー性炎症を起こし、結果的に鼻炎・喘息症状を悪化させる一因となりえます。

参考:
GC-MS analysis of incenses for possible presence of allergenic nitromusks
Health and Environmental Risks of Incense Smoke: Mechanistic Insights and Cumulative Evidence

お香を安全に楽しむ対策方法

お香

お香を楽しむときは、リスクを理解しつつできるだけ安心して活用するための工夫を取り入れることが大切です。

以下では、具体的な対策方法を解説します。ポイントを押さえれば、「香りを楽しみたいけれど体に悪いのは避けたい」というジレンマをある程度解消できます。

適度に換気を行う

お香を焚く場所が室内であれば、換気は必須といっても過言ではありません。煙を閉ざされた空間で長時間溜め込むと、PM2.5をはじめとした微粒子や化学物質の濃度がどんどん高まってしまいます。特に、寒い時期は窓を開けるのが億劫になりがちですが、短い時間でもいいので窓を開け、空気を入れ替えることを意識しましょう。換気扇や扇風機を使って、煙を一か所に溜め込まないよう工夫するのも効果的です。

換気を行うタイミングも重要です。例えば、お香を焚き始めて少し経ったら窓を開ける、焚き終わりのタイミングで空気をしっかり入れ替えるなど、適宜換気を習慣化すると、微粒子を吸い込むリスクを大きく減らせます。可能であれば窓の複数開けやサーキュレーターなどの利用で空気を循環させれば、煙を部屋の隅々に滞留させることを防ぐことができます。

使用頻度を調整する

お香はあくまでも「香りを楽しむ」アイテムですので、毎日何時間も焚き続ける必要はありません。どうしても日常的に使いたい場合でも、一回あたりの使用時間や回数をコントロールするだけで、身体への影響は軽くなるでしょう。例えば、焚く時間を一回30分程度にして、一日に焚く回数を1回か2回程度に抑えると、吸い込む煙や香りの総量が減ります。

また、特にリラックスタイムが欲しいときだけお香を活用する習慣にしてみるのもおすすめです。ストレスが溜まったときや集中したいときなどに限定してお香を焚くことで、その香りをかぐと落ち着くという心理的な効果も得やすくなります。頻繁に使い過ぎると、体や鼻が慣れて香りの特別感が薄れる場合もあるので、メリハリをつけて使用することがポイントです。

お香の選び方に注意する

お香はものによって原料や香料の品質が大きく異なるため、上手に選ぶことで体への負担を減らせます。例えば、天然由来の精油のみを使用したお香や化学合成香料の添加が少ないお香を選ぶと、燃焼時に発生する刺激物質をある程度抑えられる場合があります。また、竹芯なしのコーンタイプや無煙タイプのお香などは、煙の量が抑えられることが多いので、煙が気になる方におすすめです。

ただし、天然だからといって絶対に安全というわけではありません。植物性のアレルゲンが含まれている可能性があるため、初めて使う香りは少量から試して、自分の体や鼻との相性をチェックするのが無難です。あまりに香りが強すぎると感じる場合は、同じシリーズでも香りの濃度が低いタイプに切り替えたり、焚く本数を減らすなど工夫してみると良いでしょう。また、パッケージの表示を見て、なるべく情報が明確なものを選ぶことも大切です。

お香を焚く場所を工夫する

お香を焚く場所を変えるだけでも、体に負担がかかりにくい環境をつくれます。例えば、部屋の中央や人が集まりやすい場所ではなく、空気の流れが生まれやすい窓辺や換気扇の近くを選ぶ方法があります。そこにお香を置くことで、煙が室内全体に充満するのを防ぎ、自分や家族が直接多量の煙を吸い込むリスクを低減できます。

さらに、ペットや子どもがいる家庭では、高い場所にお香を置いて、煙が彼らの顔に直撃しないように工夫するのも重要です。また、住居スペースと作業スペースを分けられる環境であれば、作業部屋ではお香を焚かないようにするなど、利用シーンを区切りながら使うだけでもリスクをコントロールしやすくなります。こうした小さな工夫の積み重ねで、お香のメリットを享受しつつ、健康面の不安をできるだけ減らすことができるでしょう。

お香の代替におすすめなアイテム

ディフューザー

お香を避けたい方や煙そのものが苦手な方、あるいはアレルギーを抱えている方は、香りを楽しむための代替アイテムを活用するのも一つの方法です。煙が出ない、あるいは出にくいアイテムを活用すれば、お香と同様のリラックス効果や空間演出を得ながら、呼吸器への影響を最小限に抑えることが期待できます。

無煙のお香を活用する

一般的には、線香タイプのお香や円錐型のコーンタイプのお香をイメージする方が多いと思いますが、中には煙をほとんど発生させない無煙タイプのお香があります。これは、燃焼時に煙が出にくい特殊な製法で作られており、通常のお香のように白い煙がもくもく出ることがありません。香りだけを楽しみたいという方にとっては魅力的なお香です。

ただし、無煙タイプといっても多少の煙や微粒子が全くゼロになるわけではなく、燃焼する以上は多少の成分が空気中に放出されます。とはいえ、煙の量が圧倒的に少ないため、香りの楽しみ方が大きく変わるでしょう。煙のにおいが衣類や家具に付着しにくいのもメリットで、後片付けも比較的楽な場合が多いです。「お香を楽しみたいけれど煙は嫌だ」という方は、まず無煙タイプを試してみるのが最適といえます。

アロマディフューザーを活用する

お香の香りが好きだけれど、火を使うことや煙自体が気になるという場合には、アロマディフューザーを使う方法がおすすめです。アロマディフューザーは、水とエッセンシャルオイルを入れて、超音波などの力でミストを発生させ、空間に香りを広げる仕組みになっています。煙ではなく、水蒸気や微細な霧状の粒子によって香りが拡散されるため、呼吸器への負担はお香の煙よりも軽くなることが期待できます。

また、アロマディフューザーのメリットとしては、火を使わないので火事のリスクがない点や就寝時にも安全に使いやすい点が挙げられます。加湿効果を得られるタイプもあり、乾燥対策に役立つこともあります。エッセンシャルオイルの成分次第ではリラックスできる香りを楽しめるため、お香の雰囲気に近い効果を得られます。ただし、オイルの品質や香りの強さには個人差があるので、最初は少量から試すと安心です。

ルームフレグランスを活用する

部屋全体にふんわりと香りを行き渡らせたいときは、ルームフレグランスやリードディフューザー、さらにはスプレータイプのフレグランスなどを活用するのも有力な選択肢です。リードディフューザーの場合は、リードスティックが香りを吸い上げ、自然に拡散してくれます。お香のように燃焼による煙が発生しないため、煙特有のにおい移りや健康リスクを気にする必要がありません。

また、ルームフレグランスはインテリアとしても楽しめるデザイン性の高さが特徴で、部屋の雰囲気づくりに一役買ってくれます。ただし、お香のように「火を灯して煙と香りを楽しむ」という独特の風情はありませんので、そこを重視する人には少し物足りなく感じることもあるかもしれません。それでも、健康リスクを抑えつつ香りを楽しみたい方には、煙が出ないルームフレグランスは最適といえます。

お香が体に悪いのQ&A

お香を毎日焚いても大丈夫なのでしょうか?

頻繁にお香を焚いても、十分な換気や短い焚き時間を意識すれば大きな問題にはなりにくいと考えられます。しかし、一日中部屋を閉め切って焚きっぱなしにするなど、煙を長時間吸い続ける状況は避けたほうがいいでしょう。特に呼吸器系が弱い方や小さな子ども、高齢者が同居している場合には、注意が必要です。

お香を焚くと部屋に臭いが残ってしまうのですが、対策方法はありますか?

お香を焚いた後は、必ず換気して空気を入れ替えることが最善の方法です。カーテンや布製ソファなど吸着しやすいものには臭いが残りやすいので、定期的に洗濯や掃除をするのもおすすめの対策になります。香りが強いお香を使うほど部屋に残る臭いも強くなるため、より香りが穏やかなタイプのお香に変更するか、焚く本数や時間を減らしてみると、臭い残りが軽減される可能性があります。

天然香料のお香なら安全でしょうか?

天然香料だけを使用しているお香は、合成香料に比べると刺激が少ない可能性はありますが、必ずしも完全に安全とは限りません。植物由来成分でもアレルギー反応を起こすことはあり得ますし、やはり煙が出ることに変わりはありません。体質的に敏感な方や不安がある場合には少量から試し、異常がなければ徐々に使用量を増やすなど、自分の状態を確かめながら使うことがおすすめです。

お香を安全に配慮して楽しもう

お香

お香が体に悪いといわれるのは、燃焼時の煙に含まれる微粒子や化学物質が呼吸器やアレルギーに影響を与える可能性があるからです。一方で、お香は上手に使えばストレスケアや気分転換に役立つ面も見逃せません。

安全にお香を楽しむためには、こまめな換気と使用頻度の調整、香料がたくさん含まれた製品を避ける、無煙タイプのお香を試してみるなど、意識することが重要です。ライフスタイルと健康状態を考慮に入れながら、無理のない範囲でお香を楽しんでください。

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